前回台湾のファンメンタル(政治・経済・財政)についてひも解いていきました。
既に1人あたりGDPは25,000USDと先進国と近しい水準まできており、
経済成長率は2%程度と米国と同様の水準に落ち着いており、既に新興国特有の高度経済成長のフェーズを
終えてしまっており株式投資の魅力は低いということがファンダメンタルズの観点から分かりました。
本日は仮に台湾への株式を行うとなった際に重要になってくる為替リスクについて、
台湾の通貨である台湾ドル(通称TWD)がどのように推移していくのかの見通しを考えていきたいと思います。
目次
台湾ドル(TWD)って?通貨制度はどうなっているの?
まずは台湾ドルとはどのような通貨なのか?
通貨制度はどうなっているのか?という点について見ていきたいと思います。
台湾ドルってどんな通貨?
台湾ドルはニュー台湾ドル、新台湾ドル、台湾元と様々な呼称がありますが、
1949年に発行されTWDと表記されます。
新とかNewと言われていることからも分かる通り、1946年~1949年にオールド台湾ドルが存在していました。
1948年に上海で発生した金融危機の影響で、オールド台湾ドルも暴落し、
急激な物価上昇が起こったことによりデノミネーションを行い新台湾ドルが誕生しました。
40,000オールド台湾ドル=新台湾ドルに変換されたらしく、インフレの凄まじさを物語っていますね。
明日から現在の40,000円を新1円にしますと言われるようなものです。
新興国では台湾のようにインフレが進行し続けた結果、
通貨単を変えるデノミネーションを実施する国が多く存在します。
ブラジルや韓国もデノミネーションを行った歴史があるので、一般的なことと捉えて頂ければと思います。
台湾の通貨制度はどうなっているのか??
日本や米国のような先進国の通貨では、
為替レートを市場原理に従って決める完全変動相場制を適用しています。
台湾は以下の図をご覧頂きたいのですが、管理フロート制をしいています。

管理フロート制というのは、通常は変動相場を容認しておりますが、
いざという時に介入を行うことでレートを操作する国が該当します。
多くの新興国の他に同じような経済水準の韓国も台湾と同じ管理フロート制をしいております。
台湾中央銀行の政策金利とインフレ率からみる実質金利を分析
現在世界の中央銀行はインフレ率を金融政策の目標にしております。
日本・米国・欧州などの先進国はインフレ率を2%に設定しております。
台湾の中央銀行は目標とするインフレ率について言及しておりませんが、
現在の水準はmildつまり心地よいと表現されており、現在の水準に満足していることが伺えます。

現在のインフレ率が安定しているということもあり、台湾中央銀行は政策金利を2016年から1.375%で変更しておりません。
(引用:台湾中央銀行)
為替レートを決定ずけるのに重要な実質金利について日本と比較すると、
台湾の実質金利=政策金利1.375% – インフレ率1.6%=▲0.2%程度
日本の実質金利=政策金利0% – インフレ率1.0% = ▲1.0%
と台湾のほうが若干実質金利が高いことから、対円レートは底堅く推移しそうですね。
【参考】
新興国の為替リスクを考える上で重要となる実質金利とお国際収支とは何かをわかりやすく解説する
台湾の国際収支を分析する
次に台湾の国際収支を見ていきましょう。
国際収支というのは海外からいくらお金を引っ張ってきているかという指標で、
どれだけ稼いできているかという経常収支と、どれだけ投資を受け入れているかという金融収支に分類されます。
以下の台湾の国際収支の推移をご覧頂きたいのですが、
経常収支は一貫してプラスの一方金融収支はマイナスとなっています。
金融収支がマイナスというのは、海外に向けて投資を行っているということを示しており、
先進国によく見られる形となっています。
投資によって稼いでいこうというフェーズにきているわけですね。
(引用:台湾中央銀行)
経常収支は貿易収支(輸出-輸入)と所得収支が支えており、金融収支と合計して国際収支はプラスになっています。
貿易収支はわかりやすいのですが、所得収支というのは海外からいくら配当金や利子を受け取っているかという数値です。
現在日本は所得収支が経常収支の黒字をささえているのですが、
所得収支は海外に多く投資を行っている先進国ではプラスに、海外から投資を受け入れている新興国ではマイナスになる傾向があります。
台湾は国際収支の状態も既に先進国の持つ特徴を有していることが分かります。
参考までに以下日本の経常収支を添付しますが、所得収支が大きくプラスになっています。

いずれにせよ国際収支は安定的にプラスである為、国際収支が原因で為替が売り込まれる恐れは現時点ではないでしょう。
台湾ドル/円(TWDJPY)のチャートの形状から今後の見通しを考える
実質金利と国際収支からは台湾ドルが堅調に推移していく見込みであると考えられますが、
チャートの形状からはどうかを見ていきましょう。
直近は非常に狭いレンジでTWD/JPYレートは推移していますが、
中国が傾いた2015年から台湾ドル安が急激に進んだ局面がありました。

前回のファンダメンタルでも確認した通り、台湾はもともと中国ということもあり、
輸入も輸出も中国が20%程度と中国市場に依存している為、中国の傾きは即ち台湾ドルの軟化要因となるということが分かります。
台湾の為替総括
台湾は実質金利は日本より高く、国際収支もプラスである為、通貨の安定性は高いと考えられます。
ただ中国にネガティブなニュースが出てくるようであれば、
台湾ドルは影響を受けて下落する可能性が高いことには注意を払う必要がある。
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